半導体用語集
イントリンシックゲッタリング
英語表記:Intrinsic Gettering, Internal Gettering: IG
半導体基板の結晶特性を活かしてゲッタリング能力を引き出す方法を指し、多くの場合BMD(酸素析出物とそれに伴う転位ループなどの微小欠陥)による金属不純物捕獲能力を利用する手段を指すが、ホウ素ゲッタリングを利用したエピタキシャル基板のゲッタリングもIGに含める場合もある。CZ-Siウェハを熱処理した場合BMDが形成されるが、特にMOSデバイスでは素子活性領域にBMDがあると電気的特性に悪影響を及ぼすため、この領域から排除する必要がある。素子活性領域にBMDが存在せず、かつ深部にはBMDが存在するような分布を持つ半導体基板をえるために、高温熱処理により半導体表面近傍の固溶酸素を外方拡散させて析出に必要な濃度以下に低下させた後に、酸素析出熱処理を施す方法が採られる。こうして半導体基板表層にBMDが存在しない無欠陥層(DZ:Denuded Zone)を有し、内部のBMDがIG能力を持つDZ-IG基板が得られる。CMOSプロセスでは、高温のwell拡散工程(酸素の外拡散)の後に低温で行われる成膜工程(酸素析出物の核形成)およびLOCOS酸化工程(酸素析出物の成長)が引き続いて行われるために、デバイスプロセス中で自然にDZ-IG処理が行われる(natural IG)。BMDによりCr、Fe、Ni、Cuなど多くの金属不純物がゲッタリングされる。酸素析出によるゲッタリングは緩和誘起型と分類され、ゲッタリングの際に金属不純物はBMD又はその周辺にシリサイドとして析出する。DZを形成しても、BMDが発生する領域は表面から数10µmの深さで素子活性層近傍に存在するため、金属不純物の拡散長を考慮すると基板裏面に施されるEG法にくらべて有利である。ゲッタリング能力からみたBMDには臨界サイズがあり、直径が約200nm以上あればゲッタリング効果は変わらないと報告されている。さらにこの酸素析出物は析出する熱処理温度で板状または正八面体状など、その形状が異なるために転位ループなどの三次欠陥の発生量が変化し、ゲッタリング能力にも差がみられる。IG法の適用には注意が必要であり、酸素析出が進行し過ぎると酸素析出物周辺の歪の増加に伴う転位の成長が顕著になって、応力に対して塑性変形しやすくなり、結晶の機械的強度が低下する。逆にSbを高濃度にドープしたn+結晶では酸素析出が非常に生じにくく、数10時間もの析出熱処理を施す場合もある。
IG法に頼らずBSD法やPBS法などのEG法を用いることもある。格子間酸素濃度の低い基板では酸素析出が進行せず、IG法は働かなくなる。
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