半導体用語集
スリップ
英語表記:slip
高温での結晶の塑性変形時には、多数の転位の束(スリップバンド)が発生して表面には段差が発生する。これをスリップ転位または単にスリップという。シリコンではすべり面が{111} であるため、スリップバンドは{100} ウェハや{111) ウェハでは<110>に 平行に走る。結晶成長条件によっては結晶インゴ ットの中心と周辺の温度差や熱輻射などに起因した熱応力により、成長時導入欠陥としてのスリップが発生し有転位結晶となることがあるが、シリコンではこの問題は克服されている。半導体ウェハの高温熱処理(拡散酸化熱処理、エピタキシャル成長、RTAなど)では、熱輻射・支持部の 熱伝導が原因でウェハ面内に温度差が生じ熱応力σ が発生する。σは次式で表わされる。
σ=αE・⊿T
ここで、αは線膨張係数、Eはヤング 率、⊿T はウェハの中心と外周の温度差である。スリップが多発するとウェ ハの塑性変形(そり)が生じ、そりが 大きい場合には、リソグラフィのためのステッパ露光のエラーの原因となったり、素子製造の搬送エラーの原因となることもある。スリップはSchmid因子が大きな面内の結品位置で多発する。{100} ウェハの場合、直交する二つの<110>方向にスリップが発生するため、多発個所には交差した十字状のスリップが現われ、スターパターンとも呼ばれる。
大口径のウェハでは、自重による応力もスリップ発生の要因となる。縦型炉ではウェハ自身の重さが原因となっ て、ボート接触部でのウェハ裏面側の 傷を起点としてスリップが発生することもある。
段差が生じたスリップは光学顕微鏡や光散乱で検出されるが、段差のないスリップも含め感度の高い検出はX線トポグラフィで可能である。透過型の Lang法は有効な全面評価法として活用されてきた。また反射型のX線トポグラフィ(Berg-Barrett法)の評価により、スリップを構成する転位 線の一部が表側の素子領域まで到達する場合と至らない場合とがあることが 確認されている。
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