半導体用語集

トンネル効果

英語表記:tunnel effect

 量子力学的な系で、位置座標xの関数として表わされたポテンシャル U(x) がある時、その最高値よりも小さい運動エネルギーTを持つ粒子が、山を突き抜けて内から外に、あるいは外から内に移る現象。古典力学では決して起こらない量子力学特有の効果である。
 ポテンシャル U(x) が図1のような形で与えられる場の中で、領域Ⅰを右へ進む質点の運動を考える。力学的全エネルギーをEとすると、古典力学では運動は E - U(x) ≥ 0 の領域に限られ、 E = U(x₁) なる点x₁は転回点となる。ところが量子力学的には、 E - U(x) < 0 の領域Ⅱにも波動関数Ψ(x) は値を持ち、その結果領域ⅢにもΨ(x)は、浸み出してくる。つまり、領域Ⅰで左方より入射した波は E < U₀ でも領域Ⅲを右方に進む透過波を作ることになる。これをトンネル効果と呼ぶ。透過する確率は、図の破線と曲線 U(x) で囲まれた面積が増大するとともに急速に減少する。いま、 U(x) を高さU₀、幅αの箱型ポテンシャルとすると、透過率は下記式となる。ただし、mは質点の質量、ℏはプランク定数hを2πで割ったものである。

 原子核のα崩壊では、核内のα粒子が束縛ポテンシャルの壁を通り抜けて飛び出してくる現象で、トンネル効果の典型的な例である。固体物理にもトンネル効果の例は多くみられる。
 半導体における不純物伝導などでは、局在した電子軌道間の電子の跳躍はトンネル効果の結果である。次に半導体などに強電場を加えた時、価電子帯の上導と伝導帯の下端とがエネルギー的に等しくなると、価電子帯の電子がトンネル効果によってエネルギーギャップを突き抜けて伝導帯に遷移するようになる(ツェナ効果)。p型とn型にドープされたニつの縮退型半導体によるpn接合ダイオードでは、順方向電圧の小さい時にトンネル電流が流れる。またニつの金属あるいは半導体を20Å程度の薄い絶縁体を挟んで接触したトンネル接合を用いると、トンネル電流を測定することにより各物質の電子状態などが調べられる(金属が超伝導体の場合にはそれに特有なトンネル電流が流れる)。二つの半導体を次々に重ねて作る人工超格子では、各半導体膜の厚さを制御してトンネル効果の大きさを変えて、膜に垂直な方向の電子の運動を人工的に変化させられる。物質に強電場を加えると、電子は表面のポテンシャル障壁を通して真空中に脱出する。この電界電子放出の現象もトンネル効果の結果である。
 トンネルダイオードとは順方向に電圧制御型の負抵抗を持つpn接合ダイオードのことで、発明者の江崎玲於奈の名をとって、エサキダイオードともいう。不純物濃度の高いpn接合を用いる。山点までの順方向電流は空間電荷層をツェナ効果によるトンネル効果で抜けて流れるが、山点から谷点の間の電圧ではp領域とn領域のエネルギー帯の相対的位置が変化し、遷移できる準位が減るので電流が減少する。谷点以後は拡散電流になる。谷点まではトンネル電流であって時間的遅れがないので、高速度スイッチ素子、マイクロ波増幅、発振素子に使用される。

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