半導体用語集

マイクロラフネス

英語表記:microroughness

マイクロラフネスというのは、その名のとおり「微小粗さ」、要するに表面の微細な凸凹というか「ざらつき」の度合を指す指標である。JISでは面粗さを示す指標表記としてRaや Rms といったパラメータが定義されているが、JISの定義にはラフネスという用語はあってもマイクロラフネス という用語は定義されておらず、JIS B 0601、B 0610、B 0651といった規格では粗さを示す指標の名称は「表面粗 さ」であって「マイクロラフネス」ではない。これらの標準では、粗さの対象として機械工作部品の面や塗装面の粗さを想定しているようである。シリコンウェハの場合は、マイクロラフネ スという表現をもってウェハの表面の (周期性や高さが)ミクロンオーダ以下の凹凸のことを指しているというのが業界関係者の一般的認識である。「マイクロラフネスという用語は、SEMI規格の中では「surface roughness components with spacing between irregularities (spacial length) less than about 100km」と定義されており、かつ、rms-microroughness(表記記号はRa)が米国標準であるANSI/ASME B46.1および国際標準であるISO 4287/1に沿って定義されている。しかしながら、実際のところは半導体関連業界内の人々の間でさえ認識にはかなりのばらつきがあるのが現状であり、同じマイクロラフネスという表現に対して、それぞれ似て非なるものをイメージしていることがある。
「粗さ」はすでに他の主要産業でも一般的用語・概念として古くからあるものである。そこへ半導体業界では「用語として競合する表現」を自分達のニーズの範囲に対応する概念の部分集合として持ち込んでしまっている。 さらに、定義にあいまいさを残しているため、結果として用語を用いるグループごとに面粗さに対応する概念の中 の異なる部分集合を指して同じ用語を充てているという状態になっている。 加えて、一部では表面粗さに関連する光学的挙動であるヘイズとの混同も見受けられる。半導体産業の社会的影響がそれほど大きくなかった過去にはこういった混乱もたいした実害がなかったのであるが、今日では半導体産業が 産業全体に与える影響は無視できないほど大きくなっているために混乱を他 産業へ波及させる可能性があり、あま り好ましい状況とはいえない。このため、国際的な標準化活動の一貫として、一般工業用語としての「表面粗さ (ラフネス)」を含めた概念・定義の見直しと用語の整理が望まれる。
ところで、マイクロラフネスの重要 性は,シリコンウェハの表面の粗さ (といっても、一般人の感覚ではとんでもなく平滑な面であるが)が、今後重要な特性要因になるという認識が高まってきているということにある。これは、LSIの高性能化、高集積化に伴い、ウェハ表面にLSIを作り込んだ 際にウェハ表面の微小な粗さがLSI の性能に影響を与える(可能性を考慮しなければならない)ようになってきたことによるものである。具体的には、LSIの高集積化によってウェハ表面に形成する絶縁膜が極端に薄くな り、結果として表面粗さによる局部的な電界集中が無視できない可能性が大きくなってきているのである。さらに、将来的にはLSIの回路要素の一つ一つの大きさが表面粗さの周期と同程度まで小さくなることが考えられる。この場合には表面粗さによる表面の非常に小さな領域の傾きがシリコンの結晶方位に対してどちらにどれだけ傾いているかが回路の動作特性に影響するようになる可能性もある。こういった意味で、マイクロラフネスは現在はまだシリコン半導体の世界で死活的に重要なパラメータというわけではないが、いずれ無視できない影響が生じると考えられるので、今から十分な注 意が払われるべきウェハの特性項目であると考えられている。ウェハ加工技術的にはマイクロラフネスは鏡面研磨加工の、それも最終段階で制御される特性要素である。


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