半導体用語集

ワイブル分布

英語表記:Weibull distribution

 スウェーデンのワイブル(W. Weibull)により1939年に材料の破壊強度分布に適用され,1951年に寿命分布に適用された分布である。パラメータを変化させることで形状が多様に変化し,多くの種類のデータを近似できるので,幅広い分野で使われている。半導体デバイスでもTDDB故障に対して適用されるだけでなく,半導体デバイスとしての故障の分布を近似するのによく使われる。
 確率密度関数よりも信頼度関数の方が簡単な形をしており,図1のように表わせる。パラメータは尺度パラメータηと形状パラメータmである。時間tの原点をずらす位置パラメータγが必要な場合もある。図1をみると信頼度関数が形状パラメータmの値を0.2,0.5,1,2,および5と変えた時に分布の形がどう変わるかがわかる。また,形状パラメータの値によらず一点(η=1×10⁶時間,R(η)=1/e=0.368)で交わる様子もわかる。図2に確率密度関数とその形状がmの値によって変わる様子を示す。mの値が5では正規分布に近い形状をしていることがわかる。図3には故障率関数とその形状がmの値によってどう変わるかを示す。mの値が1より小さい時は単調減少で,1より大きい時には単調増加である様子がわかる。特に,mが2の時には故障率関数が時間に比例して増加する様子もわかる。また,mが1の場合は指数分布になり,故障率は一定である。
 図1の信頼度関数の関数形をみるとわかるとおり,同じパラメータ値を持つアイテムが直列系でシステムを構成し互いに独立であるとすると,そのシステムの寿命分布も図4に示すようにワイブル分布となる。このことからエレクトロマイグレーション故障で,配線を長さ方向に小さなアイテムに分割し,配線全体をそのアイテムの直列系のシステムと考えて,モデル化している例もある。このモデルは数学的には整合性があるが,要素アイテムが必ずしも独立ではなく,エレクトロマイグレーション故障の寿命分布が必ずしもワイプル分布にのるわけではないということから一般性はない。一方,エレクトロマイグレーション故障の分布がよく近似できる対数正規分布では,ワイブル分布のような再帰性はないので,上記直列モデルでの整合性はない。このような不整合の現実的近似解として,信頼度関数を対数正規分布の信頼度関数のべき乗で表わすマルチ対数正規分布を用いたモデルも提案されている。このモデルの場合でも,そもそも直列モデルが成立する前提条件として,各アイテムが独立である必要があるが,配線を分割した場合にこの独立性が成立しているとは限らないという問題は残る。マルチ対数正規分布の例は対数正規分布の項を参照されたい。図4の場合と形状が近くなるようにパラメータを選んで示してある(m=2とσ=0.7)。
 ワイブル分布への適合性と,適合した場合のパラメータの推定には,ワイプル確率紙やワイプル型累積ハザード紙が用いられる。


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