半導体用語集

偏向器

英語表記:deflector

電子ビームの軌道を変えることを偏向といい、そのために用いる装置を偏向器と呼ぶ。電子ビームの偏向は、電場あるいは磁場を使って行うことができる。静電偏向は偏向板に電圧をかけ板間の電場を使って、電磁偏向は偏向コイルに電流を流しその際に発生する磁場を使って、それぞれ電子ビームを偏向する。前者は高速、小偏向として、後者は低速、大偏向として使われる場合が多い。電子ビーム描画装置では、主偏向用(大偏向領域~5mm、整定時間~20μs)用に磁界型偏向器を、副偏向(小偏向領域~50μm、整定時間 ~100ns)用に静電型偏向器を用いている。磁界型偏向器には、サドル型コイルとトロイダル型コイルを使ったものがある。空芯のトロイダル型コイルは偏向感度が低いため、通常はフェライトなどの電気絶縁性の磁性材料をボビンとしてドーナッ状に巻いたものを使う。この巻き芯を精密に加工することにより、偏向磁界の対称性は向上することができる。また、サドル型コイルでも同様に、コイルを巻くボビンに磁性体を用い、磁界が集中するようにして、偏向感度を上げることが多い。磁界型偏向器の問題点は、渦電流とヒステリシスである。偏向コイルを高速に偏向すると、偏向磁界内の導体内に渦電流が発生し、その渦電流により磁界が発生し、偏向位置誤差を発生する。渦電流を防ぐためには、磁界中に導体を配置しない、または渦電流がなくなるまで待って描画することになる。この待ち時間は描画の高速化にとっては大きな無駄時間になる。ヒステリシスはコイルの周辺に配置される磁性体によって生じ、渦電流同様に偏向位置誤差を生む。磁界型偏向コイルの内側に非磁性導体の真空壁を設けることにより、真空外に配置することができ、コイルからのアウトガスによる、真空劣化の問題はない。静電型偏向器は渦電流やヒステリシスがなく、高速で偏向できる特徴を持つ。また電極の表面に電圧を印加するので、小型・軽量で作製することができる。単純な平行平板の偏向器は、電界が回転対称でないため、小さな偏向にしか用いられない。実用的な静電型の偏向器としては、円筒型均等8極型偏向器である。電極材料としては、リ ン青銅やチタンが、絶縁材科としては、セラミックスなどが用いられる。静電型偏向器は偏向器の内側に導体の真空壁を設けることができないので、真空内に配置される。真空中に配置されるため,絶縁物への電子ビームのチャージアップ、電極表面のコンタミネーション付着によるチャージアップ、浮遊容量、電極間の放電などの問題に 注意する必要性がある。


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