半導体用語集

化学増幅レジスト

英語表記:chemically amplified resist

80年代初頭にIBM Itoらによって提案された技術である。化学増幅は露光により酸発生剤より酸を発生させ、露光後べーク ( PEB、ホスト工クスポージャベーク)することにより発生した酸を触媒として反応を進行させる、すなわち"増幅"している。 した手法は、架橋反応あるいは重合反応による光硬化性の接着剤に多くみられたものであるが、Itoらによって新たな増幅機構が提案され、LSI製造の微細加工にも適用できることが示された。Itoらは、極性変化タイプの増幅機構に加えて末端脱離により自己分解が進行する系も合わせて提案している。化学増幅レジストは基本的には、べース樹脂、光酸発生剤、酸感応物質からなっており、光によって発生した酸を触媒として酸感応物質が反応し、溶解性などを変化させ、ポジあるいはネガレジストとするものである。LSI製造においては、従来のg、 i線レジストのように感光剤を感光させることによるパターン形成では、 感度・解像性の限界がみえており、クオータミクロン以下の加工が要求されるKrFリソグラフィにおいては新しいレジスト技術が必要となっていた。化学増幅レジストは、露光後の加熱により増幅しているため、容易に高感度がえられ、また露光部と未露光部で極性変化などにより大きく溶解性が異なっているため、高い現像コントラストがえられ、高解像性を達成できる。 さらに酸あるいは塩基触媒で反応する構造が使えるため、材料の選択範囲が広がるというメリットがある。現在、KrFリソグラフィでは、ポリビニルフェノール樹脂をベース樹脂としたものになっている。多数のものが提案されてきたが、ポジ型レジストとして、次の三つのものに集約される。フェノール基をtBOC基 (ターシャリプチルオキシカルポニル基) で保護したタイプのもの、反応性の高いアセタール基で保護したもの、さらにはビニルフェノールとtBuMA (ターシャリプチルメタクリレート) などのメタクリレート構造との共重合による高ガラス転移点タイプの3種類が主なものとなっている。実際的にはこれらを組み合わせて性能をコントロールして用いられている。これらはいすれもアルカリ可溶性基を保護しておいて露光で発生した酸により保護基を脱離させ, 極性基であるアルカリ可溶性基を出現させる極性変換型のものである。 一方, ネガレジストは架橋型のものが実用化されている。ポリビニルフェノール樹脂に架橋剤としてメラミン誘導体、酸発生剤としてハロゲン化合物を用いたものが主流である。これは発生した酸により架橋剤のメチロール基とべース樹脂のフェノール基が反応し架橋して露光部が不溶化するものである。また、こうしたポジ、ネガいずれのレジストも電子線あるいはX線用レジストとして機能することも確認されており、適用されつつある。また透明性の問題でフェノール基が使えないArFレジストでは材料選択のフレキシビリティがある点を活かして、カルボン酸基を保護したものと環状炭化水素構造を組み合わせたレジストが多数提案されている。こうした化学増幅レジストに用いられる酸発生剤は光照射により酸を発生する化合物であり、イオン性の化合物と非イオン性の化合物に分けられる。イオン性の化合物としてはアリールジアゾニウム塩、ジアリールョードニウム塩,トリアリールスルホニウム塩のオニウム塩がある。これらはBF4ー、
SbF6ー、AsF6-、 PF6 ー、S03CF3- などの対アニオンを持ち、光照射により非常に強い酸を発生する。レジストには熱的に安定であるヨードニウム塩、 スルホニウム塩が使われており、その量子効率は0.1~0.3程度である。また、対アニオンは発生する酸の強さ、拡散、熱による蒸散性などに関係するためレジスト性能にも強い影響を及ぼしており、現在はS03CF3ーおよびその誘導体が対アニオンとして使われることが多い。ポジ型レジストの多くはオニウム塩が使われている。非イオン性の酸発生剤はニトロべンジルエステル、スルホン誘導体、スルホン酸工ステル、ハロゲン化合物があり、カルポン酸,スルホン酸、ハロゲン化水素などを生成する。量子効率はその構造により大きく変わり、0.1以下から溶液状態では1.0に近いものまである。オニウム塩とくらべると有機溶媒に対する溶解性にすぐれているが、耐熱性には劣り、生成する酸はオニウム塩と比較すると弱い。ハロゲン化合物がネガ型レジストの酸発生剤として使われている。


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