半導体用語集

対数正規確率紙

英語表記:lognormal probability paper

 対数正規分布への適合性の判定と適合している場合には,パラメータの推定が行えるように設計されたグラフ用紙のうちで,累積故障確率(F(t))を基に打点を行う構成の用紙。完全データだけでなく定時打ち切りデータ,定数打ち切りデータヘの適用も可能である。累積ハザード関数(H(t))と累積故障確率(F(t))の関係(F(t)=1-exp(-H(t)))を利用して,H(t)の推定値からF(t)の推定値を求め打点に用いることで,ランダム打ち切りデータヘの適用も可能になる。
 確率紙の考え方に馴染みがない場合は,「確率紙」の項目を読んだ後で以下の記述を読むと理解しやすい。
 対数正規確率紙の構成と使い方を,図1を基に説明する。図1の下に記したように標準正規分布(平均μ=0,標準偏差σ=1)(l)の逆関数(Φ⁻¹)を用いる。対数正規分布のメディアン寿命をt₅₀,形状パラメータをσとすると,(In t-In t₅₀)/σは標準正規分布に従うので,Φ⁻¹をy軸に取り,In tをx軸に取ると,対数正規分布は直線になり,傾きは1/σである(式1)。t₅₀およびt₁₅.₉はこの直線からF(t)=50%および15.9%となるtとして直読できる(通常は有効数字2桁だけとってt₁₆と表示するので,ここでも以下それにならう)。グラフ上での直線の傾きと式1での傾きが等しいとおいて(式2),In t₅₀-In t₁₆がσであることがわかる。少し注意が必要なのは,グラフではx軸はlog t(常用対数)であるが,傾きを求める際はIn t(自然対数)である点である。
 構成法を説明する。x軸を対数尺,y軸を普通尺で目盛ったグラフ用紙を用意する。グラフのy軸に-3.71(Φ⁻¹(0.01%))から3.71(Φ⁻¹(99.99%))の区間をできるだけ広く確保する。後で実際にグラフの左軸に書き込む数値や線はΦ(・)の値であり,右軸にはΦ⁻¹(F(μ+nσ))(n=-3,-2,…,3)に対応するところにF(μ+nσ)と書き込む。y軸の左側に,0.01%(Φ(-3.71)),0.1%(Φ(-3.09)),1%(Φ(-2.33))…と目盛っていく。図1は説明用なので目盛(横線)も数字も荒い間隔であるが,実際の確率紙では数値は0.01,0.1,1,5,10,20,30,40,50%,目盛は0.01から20%までは数値の間を10分割,20%から50%までは数値の間を5分割してある:50%以上はそれ以下と対称。y軸の右側には,図に示すようにF(μ+nσ)(n=-3,2,…,3)を対応する位置に記入する。15.9%(Φ-1))の位置に点線で水平線を引くとt₁₆が求め易い。x軸には特に何も目盛らず,元々の対数目盛を利用する:tを直読する。以上で確率紙ができあがる。
 次に,使い方を説明する。図1に手順の概要を手順1~5と示した。まずデータ点(ti,F(ti))のメディアンランクまたは平均ランク)を打点する(手順1)。メディアンランクは(i-0.3)/(n+0.4)でよく近似でき,平均ランクはi/(n+1)で厳密に与えられる。ここでnは故障していないものも含めた全サンプル数,iは故障時間を小さいものから大きさの順にならべた時の順番である。メディアンランクと平均ランクのどちらを使うかは,場合により異なる。一般的にはサンプル数が20以下の場合はメディアンランクを使った方がよく,比較する時には同じランクで打点したもの同士で比較した方がよい。次に目の子(目分量)で直線を当てはめる(手順2)。この時,通常の実験値への直線の当てはめと異なる点がある。縦軸のF(t)の値の目盛の密度をみるとわかるとおり,10%から90%が密度が高く,その範囲より外では密度が低い。したがって,この範囲の外側ではデータ点のばらつきが大きくなる。このことを理解し,直線の当てはめは10%から90%の範囲のデータ点に重きを置き,その範囲外のデータ点の重みは低くする必要がある。この点を考慮するとパソコンで解析する時も,直線の当てはめだけは目の子当てはめをすることが望ましい。また,図1のデータはよく直線に乗っているが,実際のデータはこの程度の少数データでは,サンプリングによるばらつきによりこれほどはのらないことも多い。A4縦長で図1のような間隔の目盛で構成した確率紙を用いた時,データ点が鉛筆に隠れる度のばらつきなら,乗っているとみなしてよい,というのがおおまかな判断基準である。さて,次にこの直線からt₅₀とσを求める。t₅₀は,F(t)=50%の線と直線が交差する点から垂線を下ろしx軸と交わった値を読むとえられる(手順3)。次に,t₁₆を, F(t)=15.9%の線と直線が交差する点から垂線を下ろしx軸と交わった値を読んでえる(手順4)。最後にσは計算でIn t₅₀-In t₁₆より求める(手順5)。


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