半導体用語集

有機金属気相エピタキシー

英語表記:metalorganic Vapor Phase Epitaxy

 有機金属分子を原料ガスの一部、もしくはすべてに用いる気相エピタキシ一法である。よくMOCVD(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)とほとんど同じ意味に用いられる。なお有機金属分子は、分子内部に金属一炭素の直接結合を有する化合物の総称であり、きわめて多彩な化合物が存在する。工業用として重要な有機金属原料に対しては、半導体グレードの高純度化が進んでいる。この化合物の例としては、トリメチルガリウム((CH₃)₃Ga)、ジメチル亜鉛((C₂H₅)₂Zn)などがある。気相エピタキシー法に用いるためには、有機金属分子が室温付近で、液体または固体として安定であり、成長反応装置までの輸送上の点から適当な蒸気圧を持ち、かつ結晶成長させる温度で熱分解されるという要件を満たしていることが重要である。
 原料の有機金属分子は、通常気相中もしくは基板結晶上で熱分解型の反応を経て結晶成長に寄与する。この成長法は、半導体結晶のみでなく、多くの結晶に用いることが可能であるが、1968年 Manasevitにより半導体結晶のエピタキシー法として有用なことが示されて以来、特にⅢ-Ⅴ族、Ⅱ-Ⅵ族などの化合物結晶の有力な成長技術として発展してきた。このエピタキシ一法の有用性は、(1)多くの結晶材料の成長に対応できる有機金属原料分子の種類の豊富なこと、(2)熱分解という比較的単純な成長機構を用いるために結晶成長の制御が容易であり、多くの目的に対応できるという点からきている。
 結晶の高純度化技術、異種結晶の界面を急峻に変化させる技術、膜厚や不純物ドーピングの均一性、多数枚同時成長など、この技術は工業的にもほぼ完成され、化合物半導体を中心とする半導体産業における重要なエピタキシャル結晶成長技術となっている。
 例としてGaAsの有機金属気相工ピタキシーについて説明する。Ga原料として(CH₃)₃Gaをホウ素原料としてアルシン(AsH₃)を用いる。これらを水素をキャリアガスとして、反応室に供給する。反応室の基板結晶は、原料分子が熱分解する温度にまで加熱されており、原料分子は基板表面近くの気相中(流体力学的淀み層)ないしは基板上で分解、反応しGaAsが基板上に堆積する。

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