半導体用語集
熱拡散
英語表記:diffusion
半導体結晶に不純物原子を導入する方法として,従来より熱拡散法が広く用いられてきた。熱拡散は,粒子の密度が一様でなく密度分布に勾配がある時,粒子が密度の高いところから低いところへ向かって流れが生じる現象である。この時粒子の流束は密度勾配に比例し,比例定数は拡散係数と呼ばれる。拡散係数は不純物の種類,温度によって決まるが,不純物濃度や欠陥濃度によって大きく影響を受ける場合もある。熱拡散法で形成した拡散層の不純物表面濃度は拡散温度における熱平衡濃度によって決まるため,高濃度層の形成に適するが低濃度層の形成には制御性が劣る。
熱拡散法は半導体表面と接する拡散源が気相の場合と固相の場合に大きく分けられるが,シリコンの場合には最近では固相からの拡散が多く用いられる。固相からの拡散方法では,不純物を含んだガラス膜や多結晶膜を半導体表面に形成し,実用的な拡散係数の値がえられる温度に加熱して半導体中に不純物が導入される。不純物を含んだガラス膜として,リンガラスやホウ素ガラスが多用されている。
化合物半導体の場合に特に問題となる点は,たとえばGaAsにおいてⅤ族元素が高い蒸気圧を持ち,高温での拡散中に容易に飛散し,表面を変質させてしまうことである。表面変質のない拡散を行うためには,多元相図に関する知識を必要とするが,Ga/As/Znの例を除いて理解が進んでいない。
一方,熱拡散はイオン注入法においても重要な問題となる。すなわち,イオン注入法では不純物イオンは静電的に加速されて結晶中に注入されるが,注入された不純物原子は結晶の格子点には位置せず,また基板結晶の構成原子も注入イオンとの衝突で変位を受けて格子欠陥が生じる。これらを回復させるため,注入後にはアニール処理が行われる。アニ―ルにより格子欠陥を消滅させ,不純物原子を格子点へ移動させて電気的に活性化させる。この活性化アニール工程で,注入された不純物は熱拡散による再分布を起こす。
SiCやGaNなどのワイドギャップ半導体では,拡散定数がシリコンの場合にくらべて著しく小さく,実用的な温度範囲で熱拡散法により不純物ドーピング層を形成するのが困難である。したがってこれらの半導体材料では結晶成長時に不純物をドーピングする方法や,イオン注入法が利用されている。
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