半導体用語集
相転移
英語表記:Phase transition
物質の一つの均質な状態を相(phase)というが、温度、圧力または電場、磁場などの外場の変化によって物質がある相から異なる相へ変化することを相転移という。相転移を生じる温度、圧力などを転移点という。相転移が準安定状態や潜熱を伴う場合を一次相転移、そうでない場合を二次相転移と呼び区別される。液体の蒸発および気体の凝縮(気相一液相転移)、固体の融解および液体の凝固(液相一固相転移)、金属の相変態は一次相転移、合金や強磁性体の秩序一無秩序転移、超伝導転移,超流動転移は二次相転移の例である。
ランダウ (L.D. Landau)による相転移の現象論では、系の自由エネルギーGを、系に定義される秩序パラメ一夕ξで記述する。ξは、気相一液相転移では全体積、合金では隣接する異種または同種原子対の割合、強磁性体では磁化にとる。外場がないとして、Gをξの偶関数で表わし、 G(ξ)=αξ²+βξ⁴+γξ⁶+・・・(1)
とおく。いまある温度域で、T=T₀を境に、α>0(T>T₀)、α<0(T<T₀)のようにαが符号を反転し、β>0、さらに高次項は無視できるものとした時、系の平衡状態を与えるGの最小値は、図1に示すように、T>T₀ではξ=0、TくT₀ではTに応じた値ξ=√(|α|/2β)で与えられる。T₀は転移温度であり、T=T₀で秩序パラメータξは連続的に0に変化する。
このような相転移を二次相転移という。T=T₀においてエントロピーS=∂G/∂T は連続的に変化するので、相転移に伴う系のエントロピー変化⊿S=0であり、潜熱L=Tc⊿Sは0である。これは二次相転移の特徴である。
一方、式(1)において、α、γ>0、β<0である時には、Gの最小値は図2に示すように、ある温度 Tcにおいて ξ=0の状態と有限のξcの状態が等しい値を示している。T<Tcでは、ξ>ξcに対してGが最小となる。この場合Tcが転移温度であり、T=Tcで平衡状態を与える秩序パラメータξは不連続的に変化する。このような相転移を一次相転移という。T=Tcにおいてエントロピー変化 ⊿S≠0となり、潜熱L=Tc⊿Sを伴う。図2にみられるように、一次相転移ではGの最小値を与える二つの状態間に自由エネルギーの山があり、T<Tcとなっても、ξ=0の状態が準安定状態として存在する場合がある。これは転移点を超えても直ちには相転移が生じないことを意味し。液体の過浴却状態や過熱状態に相当する。準安定状態は、自由エネルギーの山が十分低くなった時にカタストロフィ的に、安定状態に相転移する。これは一次相転移がヒステリシスを伴うことに相当する。二次相転移ではヒステリシスは存在しない。
上述の分類とは別に、エーレンフェスト(P.Ehrenfest)は、自由エネルギーの温度による1階微分(すなわちエントロピー)または圧力による1階微分(すなわち体積)が転移点で不連続である場合を一次相転移、1階微分は連続だが2階微分(すなわち定圧比熱または等温圧縮率)が不連続である場合を、二次相転移と呼んで相転移の次数を定めた。エーレンフェストの分類に対し、上述の分類はそれぞれ本来は、第一種相転移、第二種相転移と呼ばれる。エーレンフェストの一次相転移は第一種相転移と一致する。三次以上の相転移の例は知られていない。またエーレンフェストの分類では超流動転移のように、比熱が転移点で発散する第二種相転移が含まれない。そこで、現在では自由エネルギーの2階微分が発散する場合を含めて第二種相転移を単に二次相転移という。
二次相転移では、相転移点でα=0となるため、G(ξ)はξ=0付近で曲率の小さい曲線となる。これは平衡状態のまわりで大きなゆらぎ(臨界揺動)を発生したり、ゆらぎの緩和時間が増大すること(臨界緩和)の原因となる。
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