半導体用語集
自然放出
英語表記:spontaneous emission
物質が高いエネルギー準位E₂の励起状態2にある時,外部からの電磁波の入射なしで,より低いエネルギー準位E₁の状態1に遷移する過程で光子を放出することを自然放出といい,その光を自然放出光という。光子のエネルギーhv₀は二つのエネルギー準位間の差のエネルギー,すなわちhv₀=E₂-E₁になる。自然放出光の位相や偏光はランダムであり,実際のスペクトルは以下に述べるように周波数v₀をピークとしてある幅を持つ。ルミネッセンスや放射再結合による発光は自然放出光に分類される。
高いエネルギー準位2にある粒子数をN₂個とすると,自然放出により低いエネルギー準位1に遷移する時,単位時間当たりの粒子数の変化は,下記の式で与えられる。
ここで,A₂₁は自然放確率,または自然放出係数,またはアインシュタインのA係数と呼ぶ。またその逆数はこの遷移に伴う自然放出寿命と呼ばれている。上式の右辺が放出されるフォトン数に比例するとすると,A₂₁N₂は放出光強度に比例する。その時間変化は自然放出寿命を時定数とする指数関数で減少する。この時間変化をフーリエ変換することにより,ローレンツ型のスペクトル分布(スペクトル形状関数という)をえる。自然放出光がピークとなる周波数は上記v₀であり,ピーク値の1/2になる周波数の幅(半値全幅)⊿vはA₂₁/πとなる。すなわち自然放出光のスペクトルはこの幅の広がりを持ち,これを均一広がりと呼んでいる。
一方,気体中の原子や分子などは熱運動をしているため,ドップラ効果により自然放出光スペクトルがさらに広がる。あるいは,結晶などの中の原子では,その原子を取り巻く媒質から影響をうけ,自然放出光スペクトルが広がる。これらの要因によるスペクトル広がりを不均一広がりと呼んでいる。
半導体における自然放出はルミネッセンスとして知られており,エネルギーの高い状態への励起の方法により,光によるフォトルミネッセンス,電子線によるカソードルミネッセンス,電流注入による注入発光,電界による電界発光(エレクトロルミネッセンス),などがある。特に電流注入による発光ダイオードは広く利用されている。
自然放出に対して,レーザに利用されている誘導放出がある。レーザ発振している時,誘導放出ばかりでなく,いくらかの自然放出も起こっており,自然放出光は振幅,位相,偏光がランダムであるため,レーザ光に対して雑音となる。これによる影響を小さくするためにフィルタを用いることがある。また,最近フォトニック結晶などによる微少共振器を用いて自然放出を抑制,制御することが提案され,その研究が進められている。また,自然放出光が誘導放出の過程で増幅された時,これを増幅自然放出光(ASE)という。位相はランダムである。これを利用したものにスーパールミネッセントダイオードがある。
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