半導体用語集

負イオン

英語表記:negative

原子や分子に電子が付着して電気的に負性のイオンを負イオンという。ハロゲン原子の電子親和力は、3eV以上と大きく負イオンが形成されやすい。また、原子よりも分子を形成した方が電子親和力は低くなる傾向がある。プラズマ中には、たとえばH-、C-、N-、0-、F-、Cl-などの原子の負イオンやH2- 、02-、 NO-、0H-などの分子の負イオン生成のための電子付着過程には、 放射性付着、三体付着、衝突付着、解離付着,二重電子付着がある。放射性付着は、電子が原子や分子に接近してこれらの原子や出して安定化する過程である。三体付着は、第三体を介して電子が原子や分子に付着して負イオンを形成する過程である。これは、第三体となる原子や分子が電子の運動エネルギーを吸収して電子が減速されて分子に付着する。このような反応は、1気圧以上の高気圧において顕著となり、強い温度依存性を持つ。特に大きな分子では、分子がまず第三体とゆるく結合した後に電子が付着して負イオンを形成し、その後第三体を放出して安定化する反応過程がある。
衝突付着は,分子が電子を捕獲して振動励起した負イオンを形成した後に第三体と衝突することによって過剰のエネルギーを放出して安定化する過程である。解離付着は,電子が分子に付着する時に、分子が解離することによ り電子のエネルギーを吸収して安定化する反応過程である。この反応過程が負イオンを生成するうえで最も大きな反応係数( 10ー11~ 10ー12 cm S/s)を有している。ハロゲン系のガスを用いた反応性プラズマ中においては,低解離付着過程によって多量の負イオンが形成されている。また、このプラズマにおいては、電子よりも負イオンの密度が大きくなる場合があり、プラズマの構造や反応性プラズマ過程に大きな影響を与えている。 負イオンの反応性についてはまだ十分解明されていないが,最近,正負イオンのピーム照射実験により両者の反応性の相違が見い出されている。パルス変調プラズマやプラズマ下流域においては、電子のエネルギーが低くなるために、ハロゲン分子への電子付着解離過程によって負イオンの生成が多くなる。 このような条件下においては、正イオンととが基板に入射するため、基板上での電気的中和過程によって電気的損傷の小さいプロセスが実現される。また、負イオンを主体とする新しい半導体プラズマプロセスが期待されている。


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