半導体用語集
量子井戸レーザ
英語表記:quantum laser
二重ヘテロ接合半導体レーザにおいて、活性層の厚さが電子のド・ブロイ波長以下になると量子サイズ効果により通常のレーザとは異なった光学的特性を示す。このようなレーザを量子井戸レーザと呼ぶ。量子井戸が1層のものを単一量子井戸レーザ、2層以上のものを多重量子井戸レーザと呼ぶ。
量子井戸構造では、膜厚方向で電子の運動が制約されるため運動エネルギーが量子化され、固有の離散的エネルギー準位が形成される。井戸の障壁ポテンシャルが無限大の場合、このエネルギー準位Enは、En=n²n²/2mdと表わされる。ここで、mは電子の質量、dは井戸の厚さ、hはプランク定数、nは自然数でありエネルギー準位を規定する。n=1の場合、すなわち電子が基底準位にある場合、運動エネルギーは、E₁=n²/2mdとなる。これは、運動エネルギーの最小値が0ではなく、E₁という有限の値となることを示している。このため量子井戸レーザでは、半導体材料の禁制帯幅がE₁だけ大きくなったように振る舞い、発光波長が短波長側ヘシフトする。この波長シフト量は量子井戸の膜厚が薄くなるほど大きくなる。また、量子井戸構造ではエネルギー状態密度が階段状関数となり、n=1の場合に、mπ/n²d、n=2の場合に、2mπ/n²dとなる。これは、通常のバルク半導体では状態密度は運動エネルギーに対し 1/2乗で増大し、最小エネルギーにおいて状態密度が0であることと大きく異なる点である。このため、量子井戸レーザでは伝導帯および価電子帯の基底準位間での電子遷移強度が強まり、光学利得が大きくなるという特徴を持つ。この特徴は、低しきい値動作、高速変調動作、低チャーピング動作などに反映され、バルク活性層のレーザより優れたレーザ特性が実現されている。
量子サイズ効果を利用した半導体レーザとしては、量子井戸レーザの他に、量子細線レーザや量子箱(ドット)レーザがある。
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