半導体用語集
電子銃
英語表記:electron gun
電子ビーム装置における電子ビーム発生源を電子銃という。電子を放出する陰極と、電子ビームを加速、収束させる陽極までも含めたものを指すことが多い。電子銃の機能は、陰極から放出された電子を加速し、あるビーム径の中に必要な大きさの電流を引き出すことにある。電子ビーム描画装置で使われる代表的な電子銃は、熱陰極電子銃と電界放射電子銃である。前者は大きな面積(~1 mm2)を均一に照射する場合に用いられ、後者は小さな面積 (~3nmɸ)を高電流密度で照射する場合に用いられる。
タングステンやランタンへキサボライト(LaB6)などの陰極を加熱して熱電子を引き出す方式の電子銃を、熱陰極電子銃という。比較的広い面積で高電流を必要とする可変成形ビーム方式の描画装置のほとんどは、電子銃に LaB6を用いている。電子銃先端は、仕事関数の低い(熱電子の放出しやすい)結晶面(110)で、2mm2程度のフラット面に加工されている。この陰極に電流を流して1,500℃ぐらいに加熱するとともに高圧電源で、たとえば 50kVの負電圧(加速電圧)を印加して熱電子を引き出す。ウェーネルトと呼ばれる電極には、陰極に対して数 100Vの負電位(バイアス電圧)が印加する。陰極とウェーネル間の静電レンズ作用により、ウェーネルト直下に数mmのクロスオーバが形成される。電子光学系では、このクロスオーバが実質的な光源となる。熱陰極電子銃は 10ー4 Pa以下の真空度で使用可能となる。タングステンの単結晶の陰極先端に高電界を印加し、電子を引き出す方式の電子銃を、電界放射電子銃という。金属表面に強い電界を加えていくと、トンネル効果により金属中の電子が真空中へ放出される。実際の電子銃では、陰極と第一陽極間に引き出し電圧を、その下に配置した第二陽極に加速電圧をそれぞれ印加し電子ビームを引き出して加速する。陰極第一陽極間は正電位になるため陰極から放出された電子は発散状に広がり、陰極内に仮想的なクロスオーバが形成される。第一陽極と第二陽極間の静電レンズ作用により、電子ビームは収束しクロスオーバが形成される。電界放出は~10ー7 Paの高真空下で安定動作させることができる。ウェハ上の収束ビームの電流密度を5×103 A/cm2と大きく取ることができる。これはLaB6電子銃の約100倍であり、微細なビームで高電流をえることができ、高速なラスタ走査で描画の電子銃として用いられる。
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