半導体用語集
LDD
英語表記:Lightly Doped Drain
LDD構造は二重ドレイン構造と同じように、ドレイン領域を低濃度領域と高濃度領域の2種類の不純物領域から形成したドレイン構造である。二重ドレイン構造では高濃度領域を取り囲むように低濃度領域を形成していたが、このようにすると低濃度領域の拡散層深さが深くなるため、電界緩和はできるが短チャネル効果が起こりやすくなるという問題があった。LDD構造ではこの問題を解決するために、図1に示すように、低濃度領域を高濃度領域に隣接して設けるとともに、低濃度領域の幅(長さ)を側壁スペーサ(side - wall spacer)の幅(長さ)で自由に決められるようにしている。ドレイン近傍のチャネル電界を緩和するためには低濃度領域(LDD領域)の不純物濃度を下げ、低濃度領域の幅(LDD長)を広くすればよい。ただし、LDD領域の不純物濃度を下げすぎると、二重ドレインの場合と同じように、電界が最大となる位置が高濃度領域に移行するので電界は逆に増加するようになる。したがって、LDD領域の不純物濃度には最適値が存在する。この最適不純物濃度はLDD長が長いほど低く、また、LDD長が長いほどその時の最小電界強度も低くなる。ただし、LDD構造では電界緩和を強く行えば行うほど、LDD領域の不純物濃度が低くなり、LDD長も長くなるのでLDD領域の抵抗が増加してドレイン電流が減少する。ソース側のLDD領域の抵抗増加が特に大きな影響を持っている。したがって、LDD構造ではドレイン電流の減少を極力抑えながら電界緩和するという最適設計手法が重要となる。なお、LDD構造を用いると短チャネル効果も抑制しやすい。LDD領域の不純物濃度が低いので浅い接合の形成が容易だからである。LDD領域の接合深さが浅いとLDD領域のチャネル方向への食い込みも少なくなり、実効チャネル長の減少が抑えられるのでその分だけ短チャネル効果も抑制できる。また、LDD領域の電界緩和効果はドレイン電界のチャネル領域への影響をも低減させるのでこれによっても短チャネル効果が改善される。
LDD構造を作製するためには、ゲート電極をマスクとして不純物をイオン注入することによって低不純物濃度のLDD領域を形成した後、ゲート電極の側面に側壁スペーサを形成する必要がある。この側壁スペーサの形成には異方性エッチングが可能な反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching: RIE)を用いる。LDD領域形成後、側壁スペーサとなる薄膜を全面に堆積する。その後RIEを行うと、上からみた時のゲート電極側壁のスペーサ膜の実効的な膜厚はゲート電極の厚さの分だけ厚くみえるので、RIEを用いた全面エッチングによって表面のスペーサ膜をエッチング除去しても、ゲート電極側壁部分にはスペーサ膜が残存する。この残存するスペーサ膜の幅(側壁スペーサ長)は最初に堆積したスペーサ膜の膜厚にほぼ等しい。したがって、堆積するスペーサ膜の膜厚によって側壁スペーサ長を精度よく制御できる。LDD長は側壁スペーサ長によって決まるので、結果的にはスペーサ膜厚によってLDD長を制御できることになる。側壁スペーサを形成した後、イオン注入により高不純物濃度のドレイン領域を形成することによって LDD構造を持つMOSトランジスタを作製できる。nチャネルMOSトランジスタではLDD領域の形成にリン、高不純物領域の形成にヒ素を用いるのが一般的である。チャネル長が短い素子ではLDD領域の形成にもヒ素を用いる場合がある。pチャネルMOSトランジスタではLDD領域と高不純物領域の両方にホウ素が用いられる。LDD構造は1µm技術を用いた1Mbit DRAMのnチャネルMOSトランジスタで初めて採用されたが、その後論理LSIも含めていろいろなLSIに広く採用されるようになり、今日では高集積・大容量LSIのMOSトランジスタの標準構造となっている。
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