半導体用語集

TED

英語表記:Transient Enhanced Diffusion

 イオン注入という照射損傷を伴う不純物ドーピング時にはin-situ、アニール後を問わず、照射促進拡散が発生する。特にホウ素注入のテール部分がアニールの初期段階ですばやく拡散してしまう現象が報告された。
 浅い接合を保持するためにはきわめて低いエネルギーでイオンを導入した後、できるだけ拡散を抑えて電気的に活性化する必要がある。この際に、特に熱処理の初期状態で格子欠陥が回復する際に格子間原子が供給され、ホウ素などは特に拡散が促進される。この現象はLSIにとってはほとんどの場合、接合を深くする悪い効果である。
 典型的な実験として、δドービングしたホウ素のマーカを作成し、これに熱処理を加えることによって鋭いピークをもつホウ素分布がいかに変化するかをSIMSを用いて測定することができる。Siイオンを40keVで1×10¹⁵cm⁻²注入したものはきわめて広範囲に拡散が発生している。その拡散距離は200nmにも及んでいる。この結果でさらに興味深いのは、Siイオン注入は高々100nm程度の深さにしか及んでいないことである。100nmより深い部分はほとんどイオン注入の影響を受けていないはずである。にも関わらず、アニール時には格子間原子の供給源となって、ホウ素の拡散を一気に増速させる効果をもつ。
 このことはチャネリングを防止するためにあらかじめアモルファス化するプロセス時に関係する。チャネリング防止のための注入はEOR(End Of Range)ダメージが接合リークに影響
を与えないより、実際のドーピング深さより浅く行う。このことによってEORダメージは拡散層の内部に閉じ込められるわけである。しかし、上記のδドーピングの例は増速拡散防止に関しては遠距離であってもほとんど抑制効果を持たないということを示している。また、 ドーピング自体をイオン注入で行うわけであるから、TEDを惹起する原因はすでにイオン注入自身にあるわけであるが、注入深さよりも浅くプリアモルファスを形成しても、そのこと自体がTEDを抑制することにはならないと考えるべきである。ただし、プリアモルファス化や注入自身のエネルギーがきわめて低く、表面との距離が近い場合は様子が異なる。極低エネルギー(1keV未満)ではほとんど観測されない。これは、点欠陥の多くが巨大な欠陥シンクである、表面へ拡散するからである。同時に1keVで注入したボロンはアニール後30%程度が表面へ外方拡散してしまう。これは表面へ格子間原子が拡散することに伴ってボロンの拡散が促進されるからであろう。BF₂の注入時に5keVまでエネルギーが下がると(Bで1.1keVに対応)1,000℃•10秒のRTA後の欠陥分布に大きな差が出る。
 拡散の影響をなるべく避けるための工夫が行われてきている。高いドーズレートでイオン注入を行うと、格子欠陥密度を低くすることができ、TED抑制に繋がる。ビーム電流が0.05 mAでは 1.1×10¹⁰cm⁻²であるが、0.5mAにすると、4.0×10⁹に減少する。1mAの場合は9×10⁸まで減少した。またこれに対応して、接合の深さも電流密度が上昇すると、浅くする方向へ影響する。また、あらかじめ600℃で30分FAを行っておくと、RTAの高温処理時にTEDが抑制される。1,100℃で10秒アニールを行う前にFAを施しておくと、有意差をもって浅い接合が形成されている。
 TEDの存在を含めても現実には数10nmの浅い接合ができているので、工業的に問題はないが、ミクロには一部の拡散層でTEDが顕著になる場合を考慮しておくべきであろう。これは欠陥の出来方が決して均質なものではないことに思いをおこせば、十分な配慮をしておいても無駄にはならない。

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