半導体用語集
MCZ法
英語表記:magnetic field applied Czochralski method
MCZ法は、CCDデバイス用や、ディスクリートデバイス用などの低酸素濃度結晶を必要とするデバイス用に開発された方法である。MCZ法の特徴は、基本的には、導電体であるシリコン融液に、磁場を印加することで、対流を制御する点である。融液への磁場の印加方法によって、横磁場または水平磁場、縦磁場または垂直磁場、カスプ磁場の3種類がある。
横磁場は、融液全体を水平に磁力線が貫くために、対流の制御性に優れている。特に、石英るつぼとシリコン融液の接触部での反応により融液中に酸素が溶出するが、るつぼ壁近傍の対流が制御されることから、その溶出量が制御できる。また、るつぼから融液に溶出した酸素は、その約99%が自由表面からSiOとして蒸発し、残りの約1%が結晶中に取り込まれるが、自由表面の対流を制御することで、SiOの蒸発量が制御できる。よって、これらの対流制御により、結晶中に取り込まれる酸素濃度を制御することができる。酸素濃度は、印加する磁場強度を高くすることで、低下させることができる。また、対流制御効果により、結晶固液界面の温度変動が抑制されることで、直径方向のミクロ抵抗率分布が均一化されるなどの特徴もある。一方、縦磁場は、融液全体を垂直に磁力線が貫くことで、結晶成長軸に対する軸対称性の点では、横磁場よりよいが、ウェハ面内の抵抗率分布が悪く(軸対称だが、中央部と外周部の値が大きく異なる)、さらに、結晶軸方向の酸素濃度分布が、急激に変化する場合がある。これは特に、融液量が多い場合または少ない場合に生じることがあり、これを防止するには、るつぼ回転速度や印加する磁場強度などを工夫する必要があり、所望の酸素濃度を結晶全長にわたって取得することは難しく、量産用としては、実用化されていないと思われる。また、カスプ磁場は、上下に配置した二つの縦磁場が発生するよう電流を流す。そのため、るつぼ底部および側壁近傍の磁場強度は高く、結晶が成長する固液界面近傍は、ほとんど磁場0の状態になる。よって、固液界面の融液の挙動は、CZ結晶に近く、るつぼ回転や結晶回転により、対流を制御することがほぼCZ法と同様にできる。一方、石英るつぼとシリコン融液の接触部には、磁場が印加されるために、磁場強度を制御することで、結晶中の酸素濃度も制御できる。いわば、CZとMCZとの両方の特徴を兼ね備えた引き上げ方法である。横磁場とともに、量産用として利用されている方法である。
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