半導体用語集

ゾーンメルティング法

英語表記:zone melting method

 ゾーンメルティング法(図1)とは、帯溶融法、ゾーンメルト法とも呼ばれ、Pfannが1952年にゲルマニウムの精製法として考案した帯域精製法(ゾーンリファイニング)法の原理から派生した多くの単結晶成長法の総称であり、原料の一部を帯状に連続的に融解し、他方に結晶を成長させる方法をいう。帯域精製法とは図1に示すように原料の全体を一度に融解するのではなく、帯状に一端から融解し、この融解部分を他端に移動することにより不純物を純化する方法をいい、この時の不純物の分布は引き上げ法やブリッジマン法のような一方向凝固法とは大きく異なる。今、偏析係数k(一般に1より小さい)の不純物あるいは溶質が濃度C₀で均ーに分布している原料(長さL)を長さlの融解帯を用いてゾーンリファイニングすると、結晶中の不純物分布C(x:0~L-l)はC(x)/C₀ =1-(1-k)exp(-kx/l)と表わされる。この分布は一方向凝固法が初期にkC₀に減少した後、徐々に増加するのに対して、初期にkC₀に減少した後比較的早く一定値に増加した後はほぼ一定値になる。両方法とも最後の部分に不純物が集積され他の部分は純化されるが、ゾーンリファイニング法は容易に何回も繰り返すことができるという意味で優れた純化法である。この方法のもう一つの利点は、初期融解部分の溶質濃度をC₀/kとしておけば結晶中に取り込まれる不純物と原料の融解によって供給される不純物が同量になるので、結晶中濃度は常にC₀になることである。このように不純物分布を均ー化することをゾーンリベリングという。
 帯域精製法における原料の一部を融解するというアイデアや溶質分布を均ーにできるという原理はすぐに結晶成長に応用された。図1の左端に種子結晶を置けば高純度の単結晶がえられるが、これがいわゆる狭義のゾーンメルティング法である。図1において種子結晶を下にして90度回転すると融液は結晶の上に浮遊する。この時、るつぼを用いず融液の表面張力などにより浮遊帯が保持されている方法を浮遊帯域法(フローティングゾーン;FZ法)と呼んでいる。FZ法は、炭素や酸素不純物を含まないシリコン単結晶の成長に用いられ、6インチ直径の結晶が作成されている。FZ法とは逆に、鉛直に置いた原料棒の上端部を融解し、上方から種子結晶を接触させ、原料を融解しながら結晶を引き上げる方法をペデスタル法と呼んでいる。これらのるつぼを用いない成長法は、るつぼからの不純物混入を避けたい場合や、適当なるつぼが見い出せない場合に有用である。融帯の加熱法としては、通常のヒータ以外に、高周波加熱や集光過熱がよく用いられている。CZ法における二重るつぼ法や連続チャージ法も固化した分だけ原料を融解・補給するという意味ではゾーンメルティング法の一種である。溶質濃度を一定にするという点に着目した成長法にTZ(Traveling Zone)法やTSFZ(Traveling Solvent Floating Zone)法がある。これらの方法は、融点における液体の組成と固相の組成が異なる非調和融解物質の成長に用いられる(ただし、結晶組成と液体組成が異なるため融液成長ではなく溶液成長に分類することが多い)。非調和融解物質の融液から結晶を成長させると、融液とは異なる組成の結晶が成長し、 したがって、融液(液体)の組成が変化し、その液体から成長する結晶はさらに組成が異なっていく。このような場合、結晶組成と同じ原料を用意し、その一部を融解するとともにその最初の液体の組成を原料組成の結晶が成長するように調整しておけば、液体の組成一定のまま原料組成の結晶が成長可能である。TZ法は三元化合物半導体であるHgxCd₁-xTe(HgTeとCdTeの完全固溶体で非調和融解する)結晶の成長法として開発されたもので、縦型石英アンプルに下から、種子結晶(たとえばCdTe)、次に後に溶媒となるTe過剰のHgCdTe多結晶、さらに成長したい組成のHgCdTe多結晶原料の順に封止し、縦型のゾーンヒータ炉に設置して、Te過剰HgCdTeを融解して浮遊帯域を作り、この浮遊帯域を上方に移動することにより結晶を成長させる。TSFZ法は非調和融解酸化物結晶(たとえば、イットリウム鉄ガーネット Y₃Fe₅O₁₂(YIG)、溶媒Fe₂O₃)の成長のため開発されたもので、ゾーンレベリングの原理はTZ法と同じであるが、石英アンプルは用いずFZ法の手法を取り入れている。

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