半導体用語集

低誘電率層間絶縁膜

英語表記:low dielectric constant film, low-κfilm, low-ɛ film

LSIの低消費電力・高速化を目的として、層間絶縁膜の低誘電率化が検討されている。デザインルールがクォータミクロンに近づくにつれ隣接配線間の配線寄生容量の増加が顕在化しており、隣接配線間の寄生容量の低減には層間絶縁膜の低誘電率化が必須となるためである。図1に、三隣接配線を想定した場合の配線幅・間隔と配線寄生容量との関連を示す。1本の配線の場合には、配線寄生容量は基板に対する容量のみであり、配線幅の減少により容量は低下する。しかし、3本の配線を想定すると、隣接配線間の寄生容量が支配的となり、配線間隔の微細化で配線容量は急激に増加する。また、3 本の配線に信号が逆相で走った場合には、さらに配線容量は増加してしまう。この容量増加が、現在のLSIの低消費電力・高速化の大きな妨げとなる。
石英ガラスおよび熱酸化膜の比誘電率が3.9であることから、理想的な酸化膜の比誘電率も3.9程度と考えられる。しかし、一般に層間絶縁膜として用いられるシリコン酸化膜は、3.9よりかなり高い比誘電率を示す。プラズマCVD酸化膜は4.2から4.5程度であり、TEOS-03CVD酸化膜は4.5 から5.0程度の値を示す。さらに、塗布膜の場合は、5.0以上の比誘電率を示す場合がある。膜中に不純物、特にSi-OH基や水分が存在することで、比誘電率が上昇することが原因である。現在検討されている低誘電率膜は、シリコン酸化膜系材料と有機高分子膜材料に大別される。また、成膜法はCVD法と塗布法がともに用いられている。シリコン酸化膜系材料は、既存のLSIプロセスへの適合性が比較的高い代わりに、誘電率はあまり低くない。一般的に、シリコン酸化膜系材料の比誘電率は3.0程度またはそれ以上となる。一方、有機高分子膜材料は、容易に2.0から3.0程度の低い比誘電率をえることが可能である。しかし、既存のLSIプロセスへの適用が難しいといったことが一般にいえる。また、材料低誘電率化の手法として多孔室化が検討されている。多孔質化により材料密度を下げ、比誘電率を低下させる方法である。多孔質化は、あらゆる材料に適用できるが、現在、主に検討されている材料は、シリコン酸化膜である。また、多孔質化の極限として配線間を空洞として残すエアアイソレーションも検討されている。多 孔質シリコン酸化膜とエアアイソレーションでは、えられる比誘電率としては2.0以下が期待できるものの、既存 LSIプロセスへの適用においては、製造プロセスおよび信頼性の面でのさらに多くの課題が残されている。
現在、実用段階にあるのは比誘電率3.0程度までのシリコン酸化膜系材料と考えることができる。3.0以下の比誘電率を目指しての材料開発と材料選択およびそれらの材料をLSIへ導入可能とするためのプロセス開発が急がれている。また、低誘電率層間絶縁膜を用いてのダマシン法によるCu配線形成プロセスも、現時点では実用段階とはいえず、今後の実用化に向けた研究、開発が進められている。


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