半導体用語集

リーク電流

英語表記:leak current

pn接合ダイオードに逆バイアスを印加した時に流れる逆電流のうち、電流を起こす電子ー正孔対が接合の空乏層で発生する場合を発生(生成)電流(generation current)、空乏層以外の中性領域で発生してキャリアが拡散して、付加的な電流成分となるものを拡散電流(diffusion current)という。それぞれをIgen Idiff と表すと、逆方向電流I は、
  I=Igen + Idiff
となる。発生電流はSRH理論の4種の再結合-発生過程のうち放出過程のみにより発生し、次式で与えられる。
  Igen∝qAW・exp(―Eg/2KBT)
ここで、qは電荷量、Wは空乏層の幅、Aは接合面積、Eg は禁制耐幅、KBはボルツマン定数である。また拡散電流は、
  Idiff∝I/L・exp(―Eg/KsT)
となる。ここでLは電子または正孔の拡散長である。発生中心は空乏層が存在するとリーク電流源となり、半導体素子の接合部のリーク系の不良の原因となるため、リーク電流の測定は、シリコンウェハ表層の素子形成層の完全性の評価に有効である。実際にはイオン注入や拡散で形成したpn接合に、逆方向バイアスを印加した時の電流-電圧(I-V)特性を測定し、ブレークタウン耐圧やソフトブレークダウンを解析してリーク源の有無をチェックする手法が採られている。空乏層の幅Wは逆バイアスVと次式の関係にある。
   

ここで、εはシリコンの誘電率、Vbi はp側とn側の中性領域の電位差(内蔵電位)、Vは逆バイアス、Nbは基板の不純物濃度である。したがってI-V 特性の異常からリーク源が表面からどの程度の深さにあるかを評価することが可能である。発生電流と拡散電流は、I-V 特性の測定により分離が可能である。適当な逆バイアス値に対してえられた電流値を温度の逆数に対してアレニウスプロットして、その傾きから活性化エネルギーを求める。活性化エネルギーはバンドギャップに対応して約1.1eVとなる。発生電流は発生中心が禁制帯中央付近に準位を持つ時は約0.55eVとなる。金属不純物ではその準位に応じた値を示す。実際の測定では複数の準位が存在する場合もあり、活性化エネルギーが直ちに準位に対応するわけではなく、解釈には注意が必要である。またリーク電流は、発生する領域によって接合の周辺部によるもの(周辺成分)とバルク空乏層によるもの(面成分)に分離できる。面成分と周辺成分の長さを変化させた接合を複数用意して、それぞれについてリーク電流を測定して連立方程式を解くことにより、各成分が求められている。接合がLOCOS構造で囲まれている場合には、LOCOS転位や金属汚染により周辺成分のリーク電流に大きく寄与することである。金属汚染によるリーク電流低減にはゲッタリング技術が有効であり、たとえば裏面多結晶シリコン(PBS)によるゲッタリングを適用した場合には、EG効果によるリーク電流の現象がみられている。転位やスリップなどのプロセス誘起欠陥のリーク電流への影響については、多数の報告がある。近年でもLOCOSやSTI(Shallow Trench Isolation)などの素子分離構造に起因する応力で転位が発生し、これらが接合部や空乏層にあるリーク電流を増大させる。転位やスリップはX線トポグラフィで同定でき、ウェハ面内のリーク電流の大きいチップの分布と対応する。CCDなどのイメージセンサではOSFなどの結晶欠陥が発生中心として働き、光が入射しなくてもキャリアが発生し白く光る白傷の原因となる。プロセス誘起欠陥や微量金属汚染によっても、白傷は発生する。
BMDの影響については、I-V 曲線に「こぶ」状のkink特性が確認され、BMD1個当たりのリーク電流値はfAオーダであるとの報告がある。ただし、リーク電流の値については印加電圧、pn接合の作製条件や測定条件などに依存して変化するため注意が必要である。BMDによるリーク電流の活性化エネルギーにはBMD密度依存性がみられ、BMDによる発生中心の準位は単一なものではないことを示唆している。grown -in欠陥の影響については、R-SF、転位クラスタ、転位ループのある領域ではpn接合のリーク電流が増大することが確認されている。空洞欠陥(COP、LSTD)についても微小なリーク電流の増大が報告されているが、詳細については今後の研究が待たれる。結晶欠陥委によるリークの機構は、スリップや素子転位などについては、Cottrell効果により転位にドーパントが濃集してできるリークパスの形成で説明される。析出物によるリークの機構には局所Zener降伏モデルが提出されたが、kinkのようなソフトブレークダウンに対しては、phonon assist tunnellingとクーロン電荷中心を介したPoole-Frenkel放出による機構が提案されている。


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