半導体用語集
半導体材料
英語表記:semiconductor materials
物質をその電気的機能に基づいて分類した時,「導体(金属)」と「絶縁体」の間に存在する物質が「半導体」である。半導体の電気伝導率は,10⁻⁸S/cmという絶縁性に近いものから10⁴S/cmという導体に近いものまで非常に幅広い値を取り,その大きさは温度や不純物濃度によって大幅に変化する。この性質こそが半導体を特徴づけているものである。金属の電気伝導率は温度上昇とともに減少するが,半導体では出払い領域と呼ばれる温度領域を除けば温度上昇とともに増大する。一般に物質の電気伝導率σは,キャリア密度nと移動度μを使って,σ=neμと書き表わすことができ,金属の電気伝導の温度変化は温度上昇とともに移動度μが格子振動による散乱のために低下することによって説明される。これに対し,半導体では温度上昇とともにキャリア密度nが指数関数的に増大し,その増加が移動度μの多少の低下補ってあまりあるため,電気伝導率は増大する。半導体と金属とのキャリア密度の温度依存性の違いは,次に述べる電子状態の違いに基づいている。
半導体中の電子の状態は,孤立原子内やイオン中の電子状態とは異なり,エネルギーは飛び飛びの値をとらず,価電子帯および伝導帯と呼ばれる幅の広い範囲のエネルギー値を持つ。エネルギー帯を作る理由は,固体中においては原子同士が接近しているため,隣り合う原子と原子の間の領域で電子の感じるクーロンポテンシャルが低下し,電子が飛び移りやすくなって,電子が結晶全体に広がって分布するためである。エネルギー帯の広がりは,飛び移りによる電子の運動エネルギーのゲインの尺度を与えている。絶対零度において,真性半導体の価電子帯の電子状態は電子によってすべて占められる一方,伝導帯には電子が存在しない。価電子帯と伝導帯の間にはバンドギャップと呼ばれるエネルギー領域があり,この範囲のエネルギーを電子は取ることを許されない。したがって絶対零度において真性半導体の伝導帯には電子がなく,価電子帯にはホールがないため電気伝導に寄与できない。このため真性半導体の絶対零度における電気伝導率はゼロである。温度が上昇すると熱エネルギーによってバンドギャップを超えて価電子帯から伝導帯への電子励起が起きる。このため伝導帯には伝導電子が,価電子帯にはホールが生じ,温度とともに増加する。キャリア密度は活性型の温度変化を示し,その活性化エネルギーはバンドギャップの大きさの1/2倍である。一方,金属伝導性の物質では伝導帯の一部が電子によって占有されているため,温度変化を与えてもキャリア密度の上昇は起きない。このため,電気伝導は移動度だけで決まる。
固体において原子を結びつけているのは,化学結合である。ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge)などⅣ族元素半導体を凝集しているのは共有結合(covalent bond)である。ケイ素は3s²3p²の4個の外殻電子を持つが,隣り合う原子から電子を出し合い,3s3p³の混成軌道(hybridized orbitals)を形成しこれによって結合する。混成軌道のうち結合性軌道(bonding orbitals)が電子によって占有され価電子帯になる。一方,電子の占有がない反結合性軌道(antibonding orbitals)が伝導帯に対応する。分子軌道法の用語では,前者をHOMO(Highest Occupied Molecular Orbitals),後者をLUMO(Lowest Unnocupied Molecular Orbitals)と呼んでいる。
元素周期表においてⅣ族(Si,Geなど)を狭んでⅣ族から等間隔にある2種の元素で化合物を作ると,同様の化学結合ができて半導体になる。たとえば,Ⅲ-Ⅴ族の一例GaAsにおいては,Gaから3s²3p¹の3電子が供給され,Asから4s²4p³の5電子が供給され再配分され,1原子当たり4個の電子はsp³混成軌道を作る。Ⅲ-Ⅴ族半導体はⅣ族と等電子的(isoelectric)であるという。Ⅳ族を出発点として,Ⅱ-Ⅵ族,Ⅲ-Ⅴ族がえられ,さらに,Ⅱ-Ⅵ族においてⅡ族をⅠ族とⅢ族の二つの元素で置き換えるとⅠ-Ⅲ-Ⅵ₂族の化合物,次にⅠ族を空格子点とⅡ族で置換するとⅡ-Ⅲ₂Ⅵ₄族の化合物ができる。このような系列をアダマンティン(adamantine)系列と称する。アダマンティン系列の系統図を図1に示す。これらは等電子的でいすれも半導体的な物性を示す。その結晶構造は,Ⅳ族ではダイヤモンド構造(diamond structure), Ⅲ-Ⅴ族とⅡ-Ⅵ族では閃亜鉛鉱構造(zincblende structure)またはウルツ鉱構造(wurzite structure),Ⅰ-Ⅲ-Ⅵ₂,Ⅱ-Ⅳ-Ⅴ₂族では黄銅鉱構造(chalcopyrite structure)を,Ⅱ-Ⅲ₂-Ⅵ₄族では欠陥黄銅鉱構造(defect chalcopyrite structure)または欠陥黄錫鉱構造(defect stannite structure)をとる。
ダイヤモンド構造は立方晶系(cubic system)に属し,空間格子は面心立方(face centered cubic)である。この構造は単位胞(unit cell)に8個の原子を含み,反転対称(inversion symmetry)を持つ。一例としてシリコン結晶をあげると,一つのケイ素原子は他のケイ素原子の四面体で囲まれた四面体配位(tetrahedral coordination)を取る。結合角(bonding angle)は109°で,sp³混成軌道と最も相性の良い構造となっている。ダイヤモンド構造において,Ⅳ族原子をⅢ族とⅤ族で交互に置き換えたものが閃亜鉛鉱構造である。この構造も立方晶系に属し,空間格子は面心立方であるが,反転対称を持たない。Ⅲ族元素は四つのⅤ族元素で囲まれた四面体配位となる。Ⅱ-Ⅵ族も多くの結晶がこの構造を持つが,<111>方向の積層(stacking)順序に少し変更を加えた六方晶系(hexagonal system)のウルツ鉱構造をとることもある。CdSなどはこの構造をとる。Ⅰ-Ⅲ-Ⅵ₂族など黄銅鉱構造は,閃亜鉛鉱構造をc軸方向に2階建てに積み重ねた単位胞を持つが,c軸の長さは,a軸の長さの2倍からずれ,正方晶系(tetrahedral system)となる。
共有結合は異方性が強く,電子の密度は原子の中間で高くなる。化合物半導体では共有結合に加えてイオン結合が重要になってくる。Ⅲ-Ⅴ族→Ⅱ-Ⅵ族→Ⅰ-Ⅶ族というふうに電気陰性度 (electronegativity)が強くなるに従いイオン結合性の割合が大きくなる。
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