半導体用語集

洗浄技術

英語表記:cleaning technology

半導体素子の進歩は、その徴細化の歴史といえるであろう。 一方、このような徴細化を実現するための半導体素子製造の歴史は、製造過程でシリコンウェハ上に予期せず付着するパーティクルと呼ばれる徴細なちりや金属不純物などの汚染との戦いであったともとらえることができる。ウェハ表面に付着したパーティクルは、金属配線間の短絡や断線などの、いわゆるパターン欠陥を誘起し、また金属不純物は、素子の電気的な動作をつかさどるキャリアに影響を及ばし、キャリアライフタイム低下、ゲート酸化膜の耐圧不良、 pn接合電流リークなど、作製した素子の電気的特性に致命的な影響を及ぼし、結果として歩留りを低下させる。
このような理由から、シリコンウェハ上にこれらの異物が付着する機会を極力排除するという目的で、素子製作を行うクリーンルームのクリーン度や、 製造に用いる種々のガス、薬品などの純度はますます高いものが要求されてきた。一方、ウェハ上に付着してしまったこれらのパーティクルや金属不純物を除去することを目的として、各種の膜の形成やエッチング工程の前後に薬液、あるいは純水を用いた湿式(ウエット)洗浄が行われる。この洗浄工程は、他の種々の工程のほとんどがウェハ表面の各種汚染源であることから、数ヶ月を要する半導体素子製造工程の中で繰り返し行われ、全工程数に対する洗浄工程の割合は3割にも達する。また、このウェット洗浄工程の重要性は、素子の微細化の進展とともに問題となる、パーティクルのサイズ (最小パターン寸法の1/5~1/10や金属不純物濃度(<109atoms/cm2) が小さく、また少なくなるという理由からますます増してきている。近年、他の成膜およびエッチング工程との整合性や反応種の制御性に優れ、また乾燥工程が不要という理由から、乾式 (ドライ)洗浄が注目されてきている。
しかしドライ洗浄は現在のところ、「パーティクルを除去できない」とい う決定的な欠点があり、また、その洗浄は基本的に枚葉方式で、かつウェハの裏面の洗浄は不得手であるということから、バッチ処理が可能で、種々の汚染物の除去、表裏両面の同時洗浄が可能なウェット洗浄に直ちに置換されることは当面考えられず、ウェット洗浄が苦手とする微細な溝や孔部の洗浄や、次工程との整合性を重要視する場合などの一部の工程で用いられていくと考えられる。
この洗浄工程は、従来から要求されている前述した「表面の不純物の除去」という目的に加えて、近年新たに 「表面の物理化学的構造の保障」という要求にも応えなければならなくなってきている。これは、半導体素子の微細化に伴い、洗浄工程後に行う成膜工程で形成する種々の膜の厚さがますます薄くなってきていることに起因して いる。すなわち、洗浄工程後のシリコン表面の物理化学的状態、たとえば表面ラフネスや、大気中でシリコン表面に成長する自然酸化膜および洗浄溶液中で形成される化学酸化膜の有無、またはその膜質が、その後に形成する種々の薄い膜の質に影響を及ぼし、結果として作製したデバイスの電気的特性に影響を及ばすことが明らかにされてきているからである。さらに配線、電極、キャパシタなどに用いられる新材科、 CMP (Chemical Mechanical Polishing)などの新たなプロセスの導入に伴う洗浄技術の在り方、近年関心が高まりつつある環境問題の克服、さらなるコストダウンを実現するために、固液界面での洗浄機構を原子、分子レベルで明らかにしたうえで、現在の洗浄法の雛形となっている30年ほど前に開発されたRCA洗浄法を見直し、改良し、また新たな洗浄溶液および方法を開発するという動きが活発になってきている。



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