半導体用語集
転位
英語表記:dislocation
格子欠陥の一つで,原子配列の乱れが一方向に長くのびている線欠陥を転位という。転位線に垂直で二次元的な方向の格子の乱れは数原子程度である。
転位における格子変位の大きさは,バーガースべクトル(Burgers vector)によって表わされる。理想結晶において,格子点をたどって一つの閉回路を考える。欠陥を取り囲んだ場合,これに対応する格子点の回路を考えると閉回路にはならない。バーガースべクトルは,その終点と始点を結ぶべクトルとして定義される。転位線とバーガースべクトルのなす角が0°のものをらせん転位(screw dislocation),90°のものを刃状転位(edge dislocation)と呼んでいる。閃亜鉛鉱型構造を持つ化合物半導体では,すべりによって発生する転位はa/2<110>のバーガースべクトルを持つ(aは格子定数)。すべり面は{111}面であり,このような転位にはらせん転位の他に60°転位と呼ばれるものがある。バーガースべクトルがa/2<110>のすべり転位は,a/6<211>とa/6<112>のバーガースべクトルを持つ二つの部分転位に分解しているのが一般的である。これを,拡張転位と呼ぶ。また,化合物半導体では,カチオン原子の未結合手が並んだβ転位と,アニオン原子の未結合手の並んだα転位とがある。
転位の性質や密度は,半導体結晶の電気的・光学的性質に大きな影響を与える。特に,レーザーダイオードのような発光デバイスにおいては,転位の存在は初期の発光効率を下げるだけではなく,通電中に点欠陥との相互作用の結果増殖し,デバイス劣化の要因となることが知られている。結晶の硬さなどの機械的性質にも転位が大きく関係している。不純物を高濃度にドープして転位密度を下げたり,転位線を固着させて結晶の強度を増している。一方,単結晶インゴットの成長中に結晶中の温度分布が一様でなかったり,機械的なショックが加わった場合に転位が発生する。また,ある結晶を基板として薄膜をエピタキシャル成長させるような場合,基板の転位が成長層に受け継がれる(貫通転位)。へテロ接合形成において,エピタキシャル成長層の格子定数が基板結晶と等しくない時,あるいは熱膨張係数に大きな差があると,界面に弾性歪が生ずる。この歪エネルギーを解放するために界面領域で転位が発生し結晶中に残留する(不整合転位:misfit dislocation)。
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