半導体用語集

転位

英語表記:dislocation

 結晶欠陥の一種で、結晶格子内の一 連の線状の原子変位を伴う格子欠陥を転位という。結晶のすべり変形の説明に導入された概念であったが、金属、半導体で実験的に確認され、その運動と増殖は転位論として体系化されている。転位線(dislocation line)はすべりを起こした領域と他の領域の境界として定義され、転位線を中心とした数原子距離程度の円柱状領域には弾性論だけで説明できない原子配列の乱れ(転位芯)がある。転位芯の周りには弾性応力場が発生し、歪エネルギー(転位の自己エネルギー)が増加する。
 転位に伴うすべりの大きさと方向をバーガースベクトル(Burgers vector)bで表わす。バーガースベクトルとは、1本の転位の運動によって生ずる結晶のすべりの大きさ(格子定数)と方向(晶帯指数)を表わすベクトルで、b=a/2[110] のように表記する。
 転位線とバーガースベクトルが垂直な転位を刃状転位(edge dislocation)、転位線とバーガースベクトルが平行な転位をらせん転位(screw dislocation)、その他の角度関係にあるものを混合転位と呼ぶ。シリコン結晶では転位線とバーガースベクトルのなす角が60°である60°転位の発生例が多い。
 バーガースベクトルが結晶格子の周期性を表わす並進ベクトルと一致する転位を、完全転位といい、等しくない転位を不完全転位(部分転位)という。完全転位は部分転位に分解して存在することがあり、2本の部分転位の間に積層欠陥が生じる。
 転位の性質には、自己エネルギーを低くするため、なるべく曲がらずに直線状になろうとする性質(転位の線張力)や、転位が表面近傍にあると、表面に対して引力(鏡像力)を受けて表面に抜けやすい性質がある。
 完全結晶中での1本の転位のすべり運動に必要な力が、パイエルス(Peierls)力である。転位の自己エネルギーは中心位置とともに変化し、運動方向に対して一定の格子の周期で変動する周期関数が与えられ、これをパイエルスポテンシャル(Peierls potential)と呼ぶ。したがってパイエルス力は単位長さの転位がこのエネ ルギー障壁を超すのに必要な作用力と等しい。単位長さの転位に作用する外力は、バーガースベクトルの大きさとすべり面上のすべり方向に作用するせん断応力との積で与えられるので、パイエルス力に相応するせん断応力をパイエルス応力という。SiやGeのような共有結合結晶のパイエルス力は一般に金属結晶のパイエルス力より大きい。
 転位は点欠陥(原子空孔または格子間シリコン原子)との反応により、すべり面に垂直な方向に運動することができ、これを転位の上昇運動(climb motion)という。
 各世代のシリコン半導体素子の開発過程では、多くのプロセス誘起転位(LOCOS転位、trench転位や照射損傷)の発生の報告がある。現在も進行中の微細化に伴う新構造や新材料の採用に起因して、シリコン結晶に高い応力が生じ転位が発生することがある。


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