半導体用語集
DLTS
英語表記:Deep Level Transient Spectroscopy
半導体の接合容量の過渡現象を利用した過渡容量分光法(capacitance transient spectroscopy)の一種で,半導体禁制帯内の深い準位を評価する手法である。活性化エネルギーが約0.05eV以上の深い準位を持つ不純物や欠陥の検出が可能であり,不純物の同定,濃度,準位のエネルギー,捕獲断面積などを求めることができる。検出濃度限界は,基板キャリア濃度の1万分の1程度である。DLTS評価には,pn接合,ショットキ接合構造が用いられる。MOS構造の界面準位の評価にも使用されている例もある。
図1にDLTS評価時の印加電圧および接合容量の過渡的変化の例について示す。接合に逆方向バイアスを印加した状態(A)では,pn接合の空乏層幅で決まる接合容量が観測される。次に,正方向のパルス電圧(B)を加えると,半導体中の深い準位にキャリアが捕獲された状態となる。その後,パルス印加前の逆バイアス状態(C)にもどった時,準位に捕獲されたキャリアの影響により空乏層が変化し,パルス印加前よりも容量が減少する。捕獲されたキャリアは,熱励起などにより時間とともに放出されるため,接合容量が時間とともに増加する過渡的変化が観測される。DLTS信号は,測定温度を変化させ,二つの時間t₁,t₂における容量の変化量を測定し,温度軸上にプロットしたもので,特定の温度で極値を取る。この信号は,一つのエネルギー準位に対応しており,準位を同定することや濃度を求めることができる。捕獲断面積は,印加するパルス電圧の幅を変化させた時のDLTS信号のピーク値の変化により求めることができる。
DLTS法は,温度を掃引して信号をえるため,禁制帯内のほとんどのエネルギー範囲に存在する準位の検出が可能である半面,温度掃引による測定誤差が生じる。そのため一定温度のもとで接合容量の過渡的変化を測定することでDLTS法より精度を上げたICTS(Isothermal Capacitance Transient Spectroscopy)法がある。また,電圧の替わりに光を用いた光DLTS法,容量の過渡的変化ではなく容量を一定にした時の電圧の過渡的変化をとらえる一定容量DLTSなどいろいろなDLTS法がある。
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