半導体用語集
パーティクル
英語表記:particle
LSI はシリコンウェハの表層に写真技術を応用して非常に微細な回路パターンを焼きつける方法で形成される。 ここで形成する回路の配線の太さは、今日の最先端LSIではわずか0.2kmほどでしかない。このため、シリコンウェハの表面にこれを上回る大きさの 粒子が付着していれば配線がそこで切 れてしまいLSI は正常に機能しない。 また、粒子の大きさがたとえば線幅の半分であったとしても、それが回路パ ターンにかかっていれば、そこの実際の回路線幅は半分になってしまい、そこに電流が流れた時に必要以上の抵抗 として働いてLSIが本来の性能を発 揮できなかったり、あるいは発熱によって動作中に回路が焼き切れて故障してしまう。このような理由から、パー ティクルを制御し、シリコンウェハの表面を清浄に保つことはきわめて重要なことである。 とはいえ、微小なパーティクルを人間の目で検出することはきわめて困難な作業である。従来は、暗室の中でシリコンウェハの表面に強いスポットラ イトを照射するとウェハ上のパーティクルが光を散乱するために輝点として見えることを利用して検査していた。 しかしながら、この方法ではよく訓練された作業者であっても0.3 m弱の大きさのパーティクルをみつけるのが限界である。一方、最近の超LSI用の基板として用いるシリコンウェハでは、回路線幅の半分、つまり0.1km程度(タバコの煙の粒子の約1/50)のパーティクルまで検査する必要があるために、人間の目による検査では対応できなくなり、レーザ光と光電子増倍管を使用したウェハ表面検査装置での検査が不可欠になっている。しかしながら、パーティクルの検査がこういった装置に依存せざるをえなくなってしまったことが、パーティクルの定義について新たな問題を投げかけてきている。パーティクル検査装置は、その原理上、ウェハ表面でレーザ光を散乱するものをすべてパーティク ルとして計数し、さらに、散乱光量を元にパーティクルの直径を特定するように作られている。この結果として、粒子でないものでもウェハ表面検査装置に検出されたものはパーティクルとして扱い、真の大きさと無関係に表面検査装置の表示するパーティクルサイズをパーティクルの大きさとして扱うといったことになってしまっている。この典型例がCOP(Crystal Originated Particle)というもので、その実態はウェハ表面が洗浄によってエッチングされて生じた盗みであるにもかかわらず、現在のウェハ表面検査装置が付着微粒子と窪みを区別できないためにパーティクルとして計数に繰り込まれてしまっているのである。また、ウェハ表面検査装置の表示するパーティクルサイズは、標準粒子というラテックス(合成ゴム)の粒子で校正するので、実際のパーティクルの材質や形状がこれと異なれば実際のサイズと表示されるサイズはまったく異なったものになるが、この点も実質的に無視され、装置の表示したサイズがパーティクルのサイズとみなされるのである。さらに検査装置の校正に日本国内で標準的に使われている某社製の標準粒子と、NIST(National Institute of Standard Technology)という米国の標準機関の標準粒子とのいずれを使用したかで、装置が表示する大きさが異なってしまうが、これもあまり問題にされず、ユーザーであるLSIメーカーの受入検査装置がどちらを標準粒子として使っているかに応じて、ベンダーであるウェハメーカーが個別の客先ごとに調整して合わせ込んでいるのが実績である。このように、パーティクルの検査が装置に依存せざるおえなくなった結果として、名称と実体の不一致が生じているという認識から、最近ではパーティクルに替えて、LPD(Light Point Defect:輝点欠陥)やLLSs(Localized Light Scatters:局所的な光散乱体)という表現を用いるようになってきている。
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